娘の言葉が止まった日

紗月灯のひとりごと

一度目の離婚をして、半年間だけ実家に身を寄せた。

そこからアパートを借りて、私と子ども三人の生活が始まった。

新しい環境。 新しい生活。 新しい毎日。

その変化は、私が思っていた以上に、 子どもたちの心に大きな影響を与えてた。


娘の言葉が急に出なくなった日

それまでつたないながらも話していた下の娘が、 ある日を境に急に言葉を詰まらせるようになった。

言いたいのに言えない。 伝えたいのに言葉が出てこない。

娘も言葉が出ない自分に苛立ち

言葉にならない声を発することも増え、

その姿を見るたびに、胸がぎゅっと締めつけられた。

「どうして話せないの?」 「なんで言えないの?」

ただ、怖かった。

娘の心が壊れてしまうんじゃないかと、すごく怖かった。

原因不明と言われた日々

保育園でも相談し、 何件も病院に連れていった。

でも返ってくる言葉はいつも同じだった。

「環境の変化によるストレスでしょう」
「しばらくしたら落ち着くと思いますよ」

そう言われても、私の不安は消えなかった。

“しばらく”っていつ? “落ち着く”って本当に来るの?

娘の寝顔を見つめながら、 「ごめんね」と泣く夜が続いた。

自分の下した決断でこんな小さな娘にストレスを与えてしまったことへの罪悪感でとても苦しかった。

時間が過ぎるのがとても遅く感じた。 不安な時の時間は、どうしてあんなにも重いんだろう。

少しずつ、少しずつ戻ってきた言葉

それでも、あの時いろんな人が言ってくれたように、 娘の言葉は少しずつ戻ってきた。

一語。 二語。 ゆっくり、ゆっくり。

その小さな変化が、 どれほど嬉しかったか、 どれほど救われたか、 昨日のことのように覚えている。

娘の言葉が戻るたびに、 私の心も少しずつ軽くなっていった。

娘の言葉も戻り普通の日常が戻ってから、

「お母さん歴は、ずっと初心者なんだよ」

子どもたちには、ずっとこう伝えてきた。

お母さんって呼ばれているけれど、 あなた達を産んだからお母さんになっただけで、 私もあなた達と一緒に成長している。

お母さん歴も経験も、 一生ずっと初心者なんだよ。

だから間違えることもある。 泣くこともある。 迷うこともある。

でもそれでも、 あなた達を守りたい気持ちだけは、 ずっと変わらない。

あの時の私は、 不安で、必死で、泣きながら毎日を進んでいた。

でもね、 あの涙も、あの不安も、 全部“寄り添い”だったんだと思う。

完璧じゃなくていい。 強くなくていい。

母親も人間でいい。

そう思えるようになったのは、 あの頃の娘の小さな変化が、 私を救ってくれたから。

まだ甘えん坊で、不安定だけど娘なりに成長し、
「お母さんの娘で良かった」とメッセージをもらった時には涙があふれてた。

親として至らないけれど、
自分を大切にする、自分で決めた事に対して責任を持つという姿をこれから見せられたらいいなと思ってる。

こんな私の元へ産まれてきてくれてありがとう。

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